品評会に出すためのお酒だった「吟醸酒」
「吟醸」というと今はごく当たり前の言葉になりましたが、実はこれ調べるてみると一般的に周知されるようになったのは、昭和50年からだそうです。
それ以前から清酒の「吟醸」という言葉あったのですが、特別な業界用語であり、この用語が一般化するまでは「吟醸酒」は一般には口にする機会もほとんどなかったお酒でした。
意外とあたらしい「吟醸酒」の歴史
吟醸酒というと何やら江戸時代かそれ以前からあったのではないかと思ってしまうのですが、誕生したのは意外や意外、昭和初期だそうです。
「吟醸酒」誕生のいきさつは以下の通りです。
今から100年以上昔の明治40年、全国清酒品評会が開催されました。全国清酒品評会は、酒造家や酒造技術者・大蔵省(今の財務省)によって作られた日本醸酒協会主催の品評会で1年おきに開催されていたそうです。
この品評会はとても華やかな行事であり、ここで賞をとることは酒造家としてはとても名誉なことでした。そこで、品評会で優れた成績を得るために市販のお酒と別に品評会用のお酒が造られるようになりました。つまり、これが吟醸酒の始まりです。
吟醸酒の名前の由来
吟醸酒の名前は文字通り、「吟味して醸造する」から来ています。当初は吟味して醸造してできた美酒というほどの意味だったのが、清酒品評会での賞レースが過熱し始めた大正10年ごろには業界用語として特別な意味を持つようになったそうです。
品質としての「吟醸」
「吟醸」が一般に認識されるようになったのは、「清酒の内容表示」が大きく関係しています。昭和50年1月1日から「清酒の内容表示」が実施され「吟醸」について定義されたからです。(吟醸の定義については、ほかの種別と合わせて別の機会に説明します。)
吟醸酒というとお酒を飲む人には当たり前の言葉ですが、用語や種別にもこうした歴史があるんですね。吟醸酒が生まれる切っ掛けがおよそ100年前、世に知られるようになったのは約40年前。吟醸酒の歴史って意外と新しいと感じたのは私だけでしょうか。
(今回の文章は「日本酒のすべてがわかる本」穂積 忠彦 著 健友館 を参考にしました。)
今回ご紹介の熟成古酒 「東力士 吟醸」株式会社島崎酒造
昭和63年醸造の吟醸酒です。限定300本で販売されました。 市場にどれくらい残っているかは?です。
東力士の蔵元・株式会社 島崎酒造は嘉永2年(1849)に創業しました。「東力士」の由来は2代熊吉氏が無類の相撲好きであったからだそうです。仕込み水は那須岳より湧き出ずる清流那珂川の伏流水。良酒を醸すべく日々丹精込めた酒造がモットーの蔵元です。