日本酒・熟成古酒百科

日本酒の最高傑作である熟成古酒(長期熟成酒、ヴィンテージ日本酒)を啓蒙するサイトです。ワインにもまさる日本独自の文化である熟成古酒について語りましょう。蔵元自慢の熟成古酒・地酒もご紹介します。

日本酒の古くて新しい分野 熟成古酒について

世界に誇るべき日本の伝統文化「熟成古酒」

ワインや紹興酒に代表される世界の銘酒は、熟成させて香りや味わいを深めているの対して、日本酒にはこうした考えが根付かなかったのはなぜでしょうか?
日本酒には長期熟成酒はないと思われている方もいまだに多いのですが、実は日本酒にもこうした熟成文化があるのです。

日本の熟成古酒の魅力は、丁寧に作られたお酒を歳月をかけて熟成させれば素晴らしい古酒に育っていくことです。
日本では古来より熟成古酒を貴ぶ習慣があり、江戸時代には三年酒・九年酒がつくられ、新酒の2~3倍の値段で販売されていたそうです。

日本酒と税制度

ではなぜこうした日本の伝統文化が失われてしまったのでしょうか?
要因はいくつもありますが、大きくは税制といわれています。
日本酒はいつの時代も「醸造の規制」と「税金」の対象とされてきました。
日本酒はお米を原料に造られているので、「主食をお酒にしてしまうのは好ましくない」と為政者たちは考えていたのです。それに加えて倹約令や宗教上の理由もあったのだと思われます。ちなみに禁酒令は大化の改新の翌年の646年にはすでに発令されていたそうです。

お酒が流通し始めたのは平安時代後期ですが、この時代から今日にいたるまで、お酒には税金、労役、そして現物の上納などさまざまな形で課税されてきました。特に熟成古酒にとってダメージが大きかったのは明治時代からの「造石税」です。日清・日露戦争は酒税で戦ったといわれるくらいこの税制は厳しかったそうです。
酒税は1899年に地租を抜いて税収入で1番大きい位置を占めるようになり、第一次世界大戦下一時期を除けば、所得税に抜かされるまで30年以上にわたり税収1位であり続けたそうです。1902年には国税の42%が酒税でありました。

造石税は作ったお酒に対して即座に払う税なので、酒税を収めてまで長期熟成酒を作ろうとする蔵元は少なく、古酒文化が廃ってしまったのです。

熟成古酒の暗黒時代から文化再生へ

また、税制に関連して昭和に入ってからの「級別制度」も熟成古酒の発展を妨げました。たとえば、特級酒を作ったとしても年度末には自動的に二級酒になってしまうのです。つまり、品質や味には全く関係なく、商品価値が下がってしまうのです。こうしたことから、長期熟成酒は作り手の側からも敬遠されるようになってしまいました。熟成古酒にとってはまさに暗黒の時代が続きました。
しかしながら、いったんは滅んでしまったかに思えた日本酒の熟成文化ですが、心ある蔵元は熟成古酒を作り大切に貯蔵していました。また、その価値を知る一部の愛好家たちに珍重されていたのです。
そして、戦後になり、それまでの造石税は蔵出し税に変更され、平成4年には級別制度も廃止されました。
こうして少しずつですが、熟成古酒にとって良い条件になりつつあり、日本酒の熟成古酒は静かなブームとなりつつあるのです。

 

おすすめの熟成古酒
「達磨正宗 純米酒 平成8年醸造酒」

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達磨正宗(白木恒助商店)の創業は天保6年(江戸時代)です。坂本竜馬や大河ドラマで有名な「篤姫」が生まれた年に創業し、当時から岐阜市門屋門で酒造業を営んでいる老舗の蔵元です。期待を上回る香りと味わいに感動する熟成古酒です。