日本酒・熟成古酒百科

日本酒の最高傑作である熟成古酒(長期熟成酒、ヴィンテージ日本酒)を啓蒙するサイトです。ワインにもまさる日本独自の文化である熟成古酒について語りましょう。蔵元自慢の熟成古酒・地酒もご紹介します。

日本酒に長期熟成酒文化が育たなかった理由。

以前、日本の熟成古酒文化が育たなかったのは、その時代の為政者や税制などに原因があったとご紹介しました。しかしながら、文化が育たなかった理由はそれだけではありません。

実は熟成古酒文化が未発達だったのには、日本酒はお米を原料としていることや、作り手の側にも事情があったようです。

例えば、ワインと比較してみるとよくわかります。
ワインはそもそも原料が果物のぶどうです。収穫したら必要量に関係なく、ワインにしなければいけません。ワインにすることで長期に保存ができるようになるからです。
また、採ったぶどうを全量ワインにしなければならないので、当然そのシーズンに消費されなかったワインは保存されるようになります。
保存されたワインは腐らせるわけにはいきませんから、保存を念頭においた技術が発達しました。。

しかし、日本酒の場合はお米が原料なので、ぶどうのようにすぐにワインにする必要はありません。なぜなら、お米のままで保存ができるからです。
また、日本酒は防腐などの技術が未発達で、保存する場合腐らせてしまうリスクもありました。つまり、リスクやコストを考えると断然、お米のまま保存した方が安くて安心だったのです。

ですが、何にもましてお酒が熟成用と貯蔵されなかったのは、主食を原料にしていることが原因と考えられます。農業生産が安定していなかった時代に、お米から作るお酒は絶対量も多くありませんでした。
そのため、熟成用として保存するのはまれだったと考えられます。
鎌倉時代以降、「火入れ」の技術が開発され腐りにくくなったとはいえ、主食を原料にしている点や腐ってしまうリスクが完全に払しょくされていなかったことなどから、ワインのような保存によって生まれた熟成の技術やヴィンテージとしての文化が根付かなかったのではないかと考えられています。

今、静かなブームの熟成古酒。世界に誇るべきこの文化を大事に育てていきたいですね。

熟成古酒の彩り

下の写真は達磨正宗の昭和53年、57年、62年醸造分です。
同じブランドのお酒でも年度によってこんなに違うんですね。

元の色は薄黄色のお酒ですから、変化の度合いがすごいですよね。
ワインより発色がダイナミックに感じるのは、日本酒びいきだからですかね…。

f:id:vintagesake:20130916202209j:plain

↓これが今年のお酒、達磨正宗 寝越庵(ねごしあん)です。

f:id:vintagesake:20130908162312j:plain