日本酒・熟成古酒百科

日本酒の最高傑作である熟成古酒(長期熟成酒、ヴィンテージ日本酒)を啓蒙するサイトです。ワインにもまさる日本独自の文化である熟成古酒について語りましょう。蔵元自慢の熟成古酒・地酒もご紹介します。

長期熟成酒の「熟成香」と「老香(ひねか・ひねが)」について

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熟成古酒の香りを表現するとき「カラメル」「ナッツ」や「シェリー酒」などの表現がよく用いられます。これら言葉は芳しい香りを表現し、お酒の魅力を引き立てて、人々の関心を熟成古酒への導いてくれます。
しかし、熟成酒の香りは良いものばかりとは限りません。中には熟成酒の保存状態が悪かったり、きちんと管理されている場合でも熟成の過程において「老香(ひねか・ひねが)」というお酒を評価する上でマイナスになる不快なニオイがあります。

熟成古酒のいい香りと不快なニオイは紙一重

ところで、「老香」には明確な定義がありません。
手元にある資料「古酒新酒」(長期熟成酒研究会編 平成7年発行)には「香りの表現で1番に問題になるのは老香と熟成香の違いです。単純に言えば、老香は好ましくない香り、熟成香は好ましい香りですが、これは明確に区別されていません。」と書かれています。
実際、いい匂いには少しだけですが本来は不快に感じるニオイ成分が混じっていたりします。高級な香水にもごく微量のアンモニアや汗のニオイ成分が混じっているのは有名な話です。

特に自家熟成のお酒などに起りやす現象ですが、熟成の途中で老香が強くなっても時間と経過とともに和らいで、芳しい熟成香になることがあります。
特に濃熟タイプのお酒においては「老香」が通過儀礼のようです。
つまり、熟成の段階で好ましくない匂いが出てしまうのですが、時間の経過とともに熟成香へと昇華していくのです。

(蔵元ではきちんとした温度管理により老香の発生は抑え

られているので心配はほとんどありません。ご安心ください。)

美味しいお酒の判断基準は自分でつくる。

あと、これは私の経験ですが発酵食品を食べなれていない人は、老香というよりも熟成香そのものを受け付けない場合が多いように思います。

感覚の中に熟成香の経験がないと、脳がNGと判断してしまうようです。
逆にチーズなどの伝統的な発酵食品を文化に持つ欧米人に、熟成古酒の親和性が高いの理由もこのあたりにあるのかもしれません。

最終的にお酒の持つ香りを熟成香か老香か判断するのは飲み手です。「好ましい香り」か「好ましくない香り」かを見極めるためにも、美味しいお酒を飲んだら、その感動を言葉で表現してみてください。
表現することで、また新しい発見があるかもしれません。

日本酒を飲んで、感性を豊かにしましょう。

おすすめのお酒
熟成大辛口 甲子正宗(きのえねまさむね) 平成14年醸造酒 清酒

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香はバニラやバナナを想像させるのに舌に載せてころがせるとびっくり。
辛口のアンバランスさが楽しいお酒です。おすすめは「白身の魚」です。